日本の手取りは「4つの引かれもの」でできている
額面から引かれるのは所得税・住民税・社会保険料の3系統で、社会保険料はさらに健康保険・厚生年金・雇用保険に分かれます。年収500万円(40歳未満・東京)なら、所得税が約12万円、住民税が約24万円、社会保険料が約73万円で、手取りは390万5,389円。引かれものの中で最大なのは税金ではなく社会保険料で、税金2種の合計よりも大きいという点が、日本の給与の特徴です。内訳は手取り計算機で確認できます。
2年目の6月に手取りが下がる理由
新社会人が必ず経験するのに、入社前に説明されることがほとんどない仕組みです。住民税は前年の所得に対して、翌年6月から課税されます。つまり——
- 1年目:前年(学生時代)の所得がゼロなので、住民税はかかりません。
- 2年目の6月から:1年目の所得に対する住民税が始まります。給与が1円も変わらなくても手取りが減ります。
その下がり幅は年収によって決まります。
| 年収 | 住民税(年額) | 2年目6月からの月あたり減少額 |
|---|---|---|
| 300万円 | 約 117,500円 | 約 9,792円 |
| 400万円 | 約 176,800円 | 約 14,733円 |
| 500万円 | 約 242,200円 | 約 20,183円 |
| 600万円 | 約 307,500円 | 約 25,625円 |
同じ理屈は退職後にも効きます。前年に働いていれば、収入がなくなった年にも前年分の住民税は請求されます。退職・転職・独立を考えるときは、この「1年遅れの請求」を手元資金の計算に入れておく必要があります。
年収が1円増えて手取りが1万円以上減る地点
令和7年度税制改正で基礎控除が引き上げられましたが、その額は合計所得金額に応じた段階になっています(95万円 / 88万円 / 68万円 / 63万円 / 58万円)。段階ということは、境目で控除額が一気に下がるということです。その結果、年収が1円増えただけで手取りが減る地点が生まれます。
| 境目の年収 | 1円増えたときの手取り変化 | 元の手取りに戻る年収 |
|---|---|---|
| 4,750,000円 | −11,893円 | 4,766,542円 |
| 8,500,000円 | −10,209円 | 8,515,311円 |
| 6,655,555円 | −5,104円 | 6,662,958円 |
たとえば年収475万円の人が476万円に上がった場合、額面は1万円増えても手取りはほぼ増えません。年収を475万円ちょうどに設定するくらいなら、476万7,000円まで上げるか、474万円に留めるほうが手元に残ります。昇給や賞与の設計、あるいは副業収入の調整でこの帯に入りそうなときは、金額を確認する価値があります。
なお、この段階構造は令和7年・8年分の措置で、令和9年分以後は基礎控除が58万円に一本化される予定です。つまりこの逆転ゾーンは、今の2年間に限った現象ということになります。
知っておくと得な2つの境目
- 厚生年金の上限:標準報酬月額の上限は65万円(年収780万円相当)です。これを超えると厚生年金保険料はそれ以上増えないため、限界的な負担率はむしろ下がります(年収760万円で約36%、780万円で約33%)。
- 40歳の誕生日:40歳になると介護保険料(+0.795%)が上乗せされます。年収500万円で年間約31,666円、年収800万円で約44,435円の負担増です。給与は変わらないのに手取りが減るタイミングが、住民税の他にもう一つあるということです。
この計算機でカバーしていること・していないこと
- 住民税は当年所得で概算しています。実際には前年所得に対して課税されるため、収入が大きく変動した年はズレます(上記の仕組みそのものです)。
- 健康保険料は東京・協会けんぽ基準です。都道府県や組合健保によって料率が異なります。
- 賞与(ボーナス)は含みません。月々の給与ベースの試算です。
- 各種控除は未反映です。配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、住宅ローン控除、iDeCo、ふるさと納税などは結果を大きく変えます。
- 標準報酬月額の等級区分は簡略化しています。
数値は国税庁および各保険者の公表資料(令和7年度)に基づいています。誤りを見つけられた場合はご連絡ください。各計算機の検証方法はメソドロジーに記載しています。